Skip to content
開館は 金・土・日曜日・祝日 10:00-17:00 です 

昭和26年 18坪の家竣工・小泉孝設計

「昭和のくらし博物館」となっている旧小泉家住宅は、昭和26年8月に建てた木造2階建ての住宅です。設計者は主人の小泉孝です。小泉孝は、当時、建築技師として東京都に勤めていました。

建物の概要
規模・構造は敷地50 坪、1 階11.67 坪(玄関応接間/4畳半の茶の間/台所/ 6畳の座敷)2階6.33 坪(4畳半2室)、合計18坪で木造2階建て、屋根はセメント瓦、外壁は押縁下見板張です。建築費は378,000円でした。

公庫住宅
旧小泉家住宅は、昭和25 年に始まった国の住宅政策、住宅金融公庫の融資を受けて建てた、いわゆる公庫住宅です。公庫の融資住宅には9坪から18坪までという広さ制限がありました。そのため、旧小泉家住宅は制限いっぱいの18坪です。
このほか、公庫の融資を受けるには、使う材料や工法などにもいろいろな基準があり、これらがきちんと守られているかどうかが厳しく審査されました。
小泉孝は東京都でその審査を担当していましたので、こうした制限をきちんと守りながら、いかに経済的に、丈夫で、無駄のない家をつくるかに知恵を絞りました。

知恵と工夫
その知恵と工夫はつぎのようなものです。
15尺の通し柱の使用、勾配天井、合成梁、たんす置き場、作りつけ家具、部屋の端の板敷きなどどでれも合理的な工夫です。その意味でこの家は公庫住宅の設計として、一つの模範解答的な住宅ともいえます。

当時のくらし

18坪に7人がくらす
この住宅には、小泉孝、スズ夫婦とその長女和子、次女知代、三女紀子、四女千鳥のほかに、下宿人2人が一緒にくらしました。当時、公庫への返済のために下宿人を置く家は珍しくありませんでした。
2階の南側は大学生、北側は独身のサラリーマンが使っていました。家賃には朝晩の食事と掃除洗濯も含まれていました。
洗面所がないので台所で顔を洗い、便所も1か所しかないので朝は大渋滞でした。

ガスも水道も風呂もない
当初はガスも水道も引けていなかったので裏に差し掛けを下ろしてかまどを置き、薪を燃やし、水は隣の地主さんの井戸から汲ませてもらっていました。井戸は1年後に掘りました。風呂はなく銭湯を利用していました。

昭和27年 増改築

増改築の概要
竣工から1年ほどした頃に増改築をしました。
冬に冷たい隙間風が、台所の上げ板の間から入ってきて寒かったので、ワンルームになっていた台所と茶の間の間に間仕切り壁と障子を入れ、さらに、茶の間の真ん中の半畳の畳の部分を掘って、掘りごたつを設置しました。

台所を増築
竣工時は、台所の勝手口の北側に差掛けをして、竈などを置いていましたが、ここを天井と壁のある建物として整備しました。ここに井戸を掘り、流しを設置しました。

2階の南側を本来の子ども部屋に
2階は2部屋とも下宿人部屋にしていましたが、昭和30年頃に南側を借りていた学生さんが卒業したため、長女、次女、三女の部屋になりました。布団を2枚敷いて、長女と三女が同じ布団で寝て、学生さんが置いて行った机は3人が交代で使いました。

昭和41年 増築

増築の概要
その後、昭和41年に再び住宅金融公庫の住宅改良資金の融資を利用して、1階の6畳の隣に6畳に広縁付きの平屋と台所部分(台所と浴室)を増築しました。
増築部分は約9坪、屋根は長尺カラー鉄板瓦棒、外壁はラス張りモルタル塗りガン吹です。建築費は509,700円です。

昭和41年以前の変化
これ以前にガス・水道は引かれていました。
また昭和45年頃には茶の間の濡れ縁を縁側にしてガラス戸を入れました。
昭和51年には便所が水洗になりました。

平成4年 改築

平成4年に、傷んだ部分を修復し、昭和41年に増築した部分を2階建てに建て直し(現在の談話室と小泉知代記念室)、台所と浴室部分(現在の事務室と収蔵庫)も建て直しました。
昭和41年の増築後も小さな改造や手入れは行っていましたが、あちこち傷みが出てきたので建て替えることも検討しましたが、せっかく建てた家だからということで、主屋部分は残すことにしました。
主屋部分の修復は天井のベニア板の張り替え、塗り直し、襖の張り替え、外壁の傷み部分の張り替えなどで、屋根は全て日本瓦葺きとしました。

平成14年 登録有形文化財に登録

平成14年に主屋が登録有形文化財に登録されました。

「木造2階建,桟瓦葺で,昭和25年開設の住宅金融公庫融資を受けて施主自らが設計した。融資上限の建坪18坪で達成した明快な平面や形態など,工夫が凝らされている。当時の公的融資による住宅建築の有り様を示す戦後復興期の庶民住宅の好例といえる。」点において、文化財的価値があるとされました。(出典:国指定文化財等データベース
「登録有形文化財(建造物)」というのは、国の文化財です。建築後50年を経ていて、「国土の歴史的景観に寄与しているもの」「造形の規範となっているもの」「再現することが容易でないもの」ということが登録の要件になっています。

旧小泉家住宅主屋は、築50年経てすぐの平成14年に登録を認められたので、全国の文化財の中でも“年が若い小さな国の宝”と言えるでしょう。

Back To Top